金型設計手順について

アイキャッチ画像 金型設計
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「成形品の品質は金型の良し悪しで決まる」という言葉は、射出成形現場の経験者なら誰もが共感するものでしょう。


金型に関する豊富な知識を持つことは、射出成形を理解する上では不可欠で、これにより優れた金型を製作することができます。しかし、金型設計は経験則から得られる側面も多く、独学で学ぶことの難しさもあります。


そこで、本ブログでは金型を製作する際に押さえておきたいポイントを分かりやすく説明していきます。

金型設計の進め方

金型設計を始める前に以下の事項について検討しておく必要があります。これらの課題を念頭に金型設計を進めることが重要です。

  • 製品デザインからどのような問題があるか
  • どのような成形材料が使用されるか
  • どのような成形機が使用されるか
  • どのような成形技術が必要か

製品の取り数とは

製品の取り数は、製品コストと直結するので取り数は多い方が良いのですが、生産数が少ない場合は取り数は少なくなります。

キャビティの配列とは

キャビティの配列は、射出成形金型設計において非常に重要な要素の一つです。キャビティは金型内に成形品の形状を形成する部分で、キャビティの配置は製品の品質、生産効率、および金型の寿命に大きな影響を与えます。適切なキャビティの配列を設計することは、高品質な成形品を製造するために欠かせないステップです。

キャビティの配置要点

キャビティの配置には以下の重要な要点が含まれます。

  • 均一な充填: キャビティの配置は、プラスチック材料が均等に充填されることを確保するために重要です。不均一なキャビティ配置は成形品の不均一な厚みや強度につながる可能性があります。
  • 冷却効果: キャビティの配置は冷却効果に影響を与えます。冷却チャネルとの適切な配置により、成形品の冷却が均等に行われ、品質と寿命に寄与します。
  • 成形効率: キャビティの配置は成形プロセスの効率に影響を与えます。適切な配置により、成形品の取り外しや材料供給がスムーズに行えます。
  • 金型の寿命: キャビティの配置は金型の寿命にも大きな影響を及ぼします。キャビティ配置が均等でない場合、金型の摩耗や負担が不均等になり、寿命が短縮する可能性があります。

キャビティの配列の種類

キャビティの配置にはさまざまな方法があります。一般的なキャビティの配列には以下の種類が含まれます。

  • シングルキャビティ: 1つのキャビティのみを持つ金型。単純な形状の成形品を作成する際に使用されます。
  • マルチキャビティ: 複数の同じ形状のキャビティを持つ金型。同時に複数の成形品を生成できるため、生産性が向上します。
  • ファミリーキャビティ: 異なる形状の成形品を同一金型内で作成できる金型。効率的な生産に適しています。
  • スタックキャビティ: 複数のキャビティが上下に積み重ねられる金型。高い生産性を実現し、少ないスペースで多くの成形品を作成できます。

キャビティの配置は金型の設計段階で検討され、製品の要件に合わせて適切な選択が行われます。正確なキャビティの配置は成形品の品質とプロセスの効率を確保し、金型の寿命を延ばす重要な要素となります。

金型の分割面とは

金型の分割面になる部分には製品表面に分割部分のあとが薄い線になって現れます。これをパーティングラインを呼び、図面にはPLという記号であれわしています。金型の分割面を決定するさいには、製品の外観や成形材料の流動性などを考慮して、ゲートをどこに設けるか、アンダーカット部の処理方法などを総合的に判断してきめます。

金型分割面の設計

金型分割面の設計は、製品の形状や材料に応じて慎重に検討されるべきです。以下は金型分割面の設計に関する重要な要点です。

  • 成形品形状に合致: 金型分割面は、成形品の形状に適合するよう設計されるべきです。製品に凹凸がある場合、分割面はこれらの形状に合わせて考慮されます。
  • 効率的な製品の取り外し: 金型分割面は、成形品を効率的に取り外すために配置されます。このために、成形品の形状や金型の設計に合わせた適切な位置に分割面を設ける必要があります。
  • 材料供給と冷却: 金型分割面には材料供給口(ランナー)や冷却チャネルを配置するためのスペースを確保する必要があります。適切な配置は成形プロセスの効率性に直結します。
  • 金型寿命と耐久性: 金型分割面は金型の寿命と耐久性にも影響を与えます。分割面の設計が適切であれば、金型の寿命が延び、メンテナンスが簡素化されます。

分割面の種類

金型の分割面には主に次の2つの種類があります。

  • コア面(Core Side): 成形品の内側に位置し、通常は凹部や内部形状に合わせてデザインされます。成形品がコアに沿って成形されます。
  • キャビティ面(Cavity Side): 成形品の外側に位置し、通常は成形品の外形に合わせてデザインされます。成形品がキャビティに沿って成形されます。

金型分割面の正確な設計と適切な選定は、高品質な射出成形製品を製造するために欠かせない要素です。金型設計者は、製品形状、成形条件、および所望の品質に基づいて、適切な分割面の設計と配置を検討することが重要です。

ゲート設計とは

ゲートの役割としてはおおむね次のことがらがあげられます。

  • キャビティ内に充填される樹脂量を制御する
  • キャビティ内に充填された樹脂が逆流しないようにシールする
  • 製品部とランナー部の分離を容易にする

ゲート設計の要点

ゲートの設計には以下の要点が含まれます。

  • ゲートの位置: ゲートは成形品のどの位置に配置されるかが重要です。適切な位置は成形品の外観、内部構造、および性能に影響を与えます。ゲートは通常、成形品の裏面や不可視な箇所に配置され、外観を損なわないように設計されます。
  • ゲートサイズ: ゲートのサイズは、プラスチック材料の導入速度や圧力に影響を与えます。ゲートサイズが大きすぎると、不均一な充填や異常な圧力が発生する可能性があります。逆に、ゲートが小さすぎると、成形プロセスが遅くなり、品質が低下する可能性があります。
  • ゲートの形状: ゲートの形状は、プラスチック材料の流れと冷却に影響を与えます。ゲート形状は円形、楕円形、長方形などさまざまなものがあり、成形品の要件に応じて選択されます。
  • 冷却: ゲートは金型内に冷却チャネルを含むことがあり、材料が充填された後、急速な冷却が行われます。冷却効果はゲートの設計によって大きく影響され、成形品の収縮や変形を制御します。

ゲート設計と製品品質

正確なゲート設計は、製品品質に大きな影響を与えます。適切なゲート設計により、以下の利点が実現されます。

  • 均一な充填: 適切なゲート設計により、プラスチック材料が均一に成形品内に充填され、欠陥や不均一な部分が減少します。
  • 品質向上: 正確なゲート設計により、成形品の表面仕上げや外観が向上し、高品質な製品が得られます。
  • 効率の向上: 適切なゲート設計は成形プロセスの効率を向上させ、生産性を高めます。
  • 材料の節約: ゲートの適切なサイズと形状により、材料の浪費を減少させ、製品の原価を低減します。

ゲート設計は射出成形プロセスの中でのキーファクターであり、金型設計者は製品要件に合わせて最適なゲート設計を検討し、製品品質とプロセスの効率を確保する役割を果たします。

アンダーカット部の処理とは

製品を金型から取り出すさいに、製品の突き出し方向(金型開閉方向)に対して引っ掛かりとなる部分をアンダーカットと呼びます。たとえば、箱型形状の側面の穴や内ねじ形状などが該当します。

アンダーカット部の処理方法

アンダーカット部を処理するためには、以下の主要な方法があります。

  • スライダー(Slider): スライダーは金型内で動く部品で、成形品に対して水平方向に押し付けたり引っ張ったりすることでアンダーカット部を処理します。スライダーの設計は成形品の形状に合わせて行われ、アンダーカット部の取り外しを可能にします。
  • リフター(Lifter): リフターは、成形品が金型内で持ち上げられるように設計された機構です。アンダーカット部がある場合、リフターが成形品を持ち上げ、取り外しを容易にします。
  • コアプル(Core Pull): コアプルは、金型内のコア(成形品の内部形状を形成する部分)を引っ張ることでアンダーカット部を処理します。この方法は特に内部凹部に適しています。
  • インサート成形: インサート成形では、アンダーカット部に対応するために特別なインサートパーツが使用されます。これらのインサートパーツは成形品と一緒に金型内に配置され、成形後にアンダーカット部を処理する役割を果たします。

アンダーカット部の処理と金型設計

金型設計時にアンダーカット部を考慮することは非常に重要です。適切な処理方法を選択し、金型内での配置や動作を設計に組み込む必要があります。アンダーカット部を無視すると、製品が金型から取り外せず、成形プロセスが頓挫する可能性が高まります。

金型設計者は、アンダーカット部を正確に特定し、それらの部分を処理するための適切なメカニズムを選択し、金型内での適切な配置を考慮します。これにより、製品の取り外しと品質の確保が実現され、効率的な射出成形プロセスが実珸化されます。

アンダーカット部の処理は、射出成形において高品質な成形品を製造するために欠かせないステップであり、金型設計段階から慎重に考慮すべき要素の一つです。

成形収縮率とは

製品を金型から取り出した直後、製品は常温より高い温度を保っており、数時間が経過すると常温になります。この過程で製品は時間の経過と共に収縮し、一般的には成形収縮と呼ばれる現象が生じます。

成形収縮率の計算方法

成形収縮率は次の数式であらわされます。

成形収縮率 = (金型寸法 – 製品寸法) / 金型寸法 × 100

成形収縮率と成形材料

成形収縮率は成形材料の種類に大きく影響を受けます。異なるプラスチック材料は、異なる分子構造、分子量、および冷却特性を持っています。したがって、成形収縮率は材料ごとに異なります。

  • 結晶性プラスチック材料: 結晶性プラスチック(例: ポリプロピレン)は通常、比較的低い成形収縮率を持ちます。これは、結晶性プラスチックが凝固する際に分子がより密に配置されるためです。
  • 非結晶性プラスチック材料: 非結晶性プラスチック(例: ポリエチレン)は一般的に高い成形収縮率を示します。材料が冷却されると、分子構造がより乱れ、収縮が増加します。
  • ガラス繊維強化プラスチック: ガラス繊維強化プラスチックは、ガラス繊維の存在により、成形収縮率が低減します。繊維が材料の収縮を抑えるためです。

成形収縮率と成形条件

成形収縮率は射出成形プロセスの一環として、成形条件に密接に関連しています。成形条件は、射出成形時の温度、圧力、速度、冷却時間など、多くの要因から成り立っており、これらの条件が成形収縮率に影響を与えます。以下に、成形収縮率と成形条件の関係を説明します。

  • 成形温度: 射出成形材料の温度は、成形収縮率に大きな影響を与えます。一般的に、高温で成形された製品は、成形後の収縮が少なくなります。これは、高温での材料の流動性が高まり、充填が均一に行われるためです。
  • 金型温度: 金型温度も成形収縮率に影響を与えます。金型が高温の場合、冷却収縮が軽減され、成形収縮率が低くなります。
  • 射出圧力: 射出圧力は材料の充填速度を制御し、成形収縮に影響を与えます。高い射出圧力は、均一な充填を促進し、成形収縮を安定化させる傾向があります。
  • 射出速度: 射出速度は材料の充填速度に影響を与えます。速い射出速度は、材料が金型内で均一に分布し、成形収縮がコントロールしやすくなります。
  • 冷却時間: 製品が金型内で冷却される時間は、成形収縮率に大きな影響を与えます。十分な冷却時間が確保されない場合、製品が金型から取り出された後に収縮が進行する可能性が高まります。

モールドベースの設計とは

射出成形金型設計において、モールドベースは金型の基本的な構造の一部です。モールドベースは金型の基板として機能し、各種コンポーネントを取り付けるための基盤を提供します。金型の正確な構造と位置を確保するために、適切なモールドベースの設計が欠かせません。

モールドベースの役割

モールドベースは以下の重要な役割を果たします。

  • コンポーネントの配置: モールドベース上に金型の各コンポーネント(コア、キャビティ、スライダー、リフターなど)が配置されます。これにより、正確な位置関係と相互作用が確保され、成形品の品質を向上させます。
  • 冷却チャネルの配置: モールドベース内に冷却チャネルが配置され、金型内部の冷却効果を最適化します。これは成形品の収縮や変形を制御し、製品の寸法安定性を保証します。
  • 金型の強度と剛性: モールドベースは金型の強度と剛性を提供し、金型内のコンポーネントが正確な位置を維持できるようにします。これにより、金型の耐久性が向上し、高い精度の成形品が製造されます。
  • アクセスと保守: モールドベースは金型内部へのアクセスを容易にし、金型の保守や修理作業を簡素化します。金型の効率的なメンテナンスは寿命を延ばし、生産性を向上させます。

モールドベースの設計プロセス

モールドベースの設計は以下のステップで行われます。

  • 金型の構造設計: 金型の構造が決定されたら、モールドベースの設計が始まります。金型のコンポーネントの位置、冷却チャネルの配置などが検討されます。
  • 材料選定: モールドベースは高剛性であり、耐久性が求められます。適切な材料が選定され、モールドベースの強度と寿命を確保します。
  • 冷却設計: 冷却チャネルの配置が検討され、金型内の温度を制御し、成形品の品質向上に寄与します。
  • アクセスとメンテナンス: モールドベースは金型内部へのアクセスを提供し、保守作業を容易にします。適切な設計により、メンテナンスが迅速かつ安全に行えます。

モールドベースの設計は金型設計の重要な要素であり、製品の品質や生産性に大きな影響を与えます。金型設計者はモールドベースの正確な配置と構造を検討し、高品質な射出成形製品の製造に貢献します。

モールドベースの標準部品

モールドベースの標準部品は、射出成形金型の設計および製造において広く使用される共通のコンポーネントです。これらの部品は、金型の構造をサポートし、金型設計者にとって大きな利点を提供します。標準部品は効率性、組み立ての容易さ、およびコスト効率の向上に貢献します。

標準部品の役割

モールドベースの標準部品は以下の役割を果たします。

  • 金型の組み立て: 標準部品は金型の組み立てプロセスを簡素化します。これらの部品は広く利用可能で、金型設計者が迅速に金型を構築できるようになります。
  • 金型の調整: 標準部品を使用することにより、金型の調整やメンテナンスが容易になります。金型の部品交換や修理が迅速に行えます。
  • 部品の交換: 標準部品は市場で広く入手可能で、部品の交換が容易です。金型が標準部品を使用することで、部品の入手性が向上し、生産の中断を最小限に抑えます。
  • コスト削減: 標準部品は一般的にコスト効率が高く、特注部品に比べて費用が削減されます。これは金型の設計および製造のコストを削減するのに寄与します。

主要な標準部品

射出成形金型において使用される主要な標準部品には以下のものが含まれます。

  • ガイドピンとブッシング: ガイドピンとブッシングは金型のコアとキャビティの位置を正確に維持し、金型の開閉をスムーズにします。
  • イジェクターピンとリタイナープレート: イジェクターピンは成形品の取り外しを助け、リタイナープレートはピンの位置を確保します。
  • クランププレート: クランププレートは金型の基本的な構造を提供し、金型の組み立てと固定を支えます。
  • 冷却チャネルコンポーネント: 冷却チャネルコンポーネントは金型内部の冷却効果を向上させ、成形品の品質と生産性を高めます。

利点と効果

モールドベースの標準部品を使用することにより、金型設計者は金型の製造と保守を簡素化し、生産性を向上させることができます。これらの部品は効率的で信頼性が高く、金型の寿命を延ばし、製品の品質向上に貢献します。また、標準部品の入手性が高いため、金型の修理や部品交換が迅速に行え、生産プロセスの中断を最小限に抑えます。

金型の温度コントロール方法とは

射出成形金型の設計と操作において、金型の温度コントロールは非常に重要です。金型の温度が正確に制御されない場合、成形品の品質や生産効率に影響を及ぼす可能性があります。したがって、金型の温度を効果的にコントロールする方法は、成功する射出成形プロセスの鍵となります。

金型の温度コントロール方法の種類

金型の温度コントロールには、主に以下の方法が使用されます。

  • 冷却チャネル: 金型内部に設けられた冷却チャネルを通じて、冷却媒体(通常は水または油)を循環させる方法です。これにより、金型内部の温度を制御し、成形品の収縮や品質を調整します。
  • 加熱要素: 金型の特定の部位に電気または熱伝導体を組み込むことで、金型内の温度を上昇させる方法です。これは特に高温で成形材料を処理する場合に有用です。

冷却チャネルの設計

冷却チャネルは金型内部に設計され、成形品が形成される際の温度を制御します。冷却チャネルの設計には以下の要点が含まれます。

  • 配置と密度: 冷却チャネルは金型内部に均等に配置される必要があります。適切な密度で設計された冷却チャネルは、均一な温度分布を提供します。
  • 冷却媒体の制御: 冷却媒体の温度および流量を制御することで、金型内の温度を調整します。これにより、成形品の収縮や変形を制御し、品質を向上させます。
  • 適切な材料: 冷却チャネルは高温や化学的な腐食に耐える材料で作られることが一般的です。適切な材料の選択は寿命と信頼性に影響を与えます。

加熱要素の利用

金型内の特定の部位を加熱する場合、加熱要素の設計と制御が必要です。加熱要素を使用する主な要因には以下が含まれます。

  • 成形材料の要件: 一部の成形材料は高温での処理が必要です。この場合、加熱要素を使用して金型内の温度を制御します。
  • 成形品の品質: 特定の成形品の品質に影響を与える部位がある場合、加熱要素を使用してその部位を温め、品質を向上させます。
  • 成形サイクルの効率: 加熱要素を使用することで、成形サイクルを短縮し、生産性を向上させることができます。

金型の温度コントロールは成形品の品質、寸法安定性、および生産性に大きな影響を与える要素です。金型設計者は成形材料や製品要件に合わせて適切な温度コントロール方法を選択し、金型内の温度を正確に制御して優れた射出成形プロセスを確保します。

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