スラッグウェルとは

射出成形において、製品の品質を左右する要因は多岐にわたります。その中でも、スラッグウェル（またはコールドスラグウェル）は、成形不良を防ぎ、製品の品質を向上させるための重要な要素です。本記事では、スラッグウェルの役割や設計のポイント、導入のメリットについて詳しく解説します。 

スラッグウェルの役割とは？

スラッグウェルは、射出成形において冷却された樹脂（コールドスラグ）が製品に混入するのを防ぐための構造です。 射出成形機のノズル先端には、前回の射出で残った樹脂がわずかに残留しています。この残留樹脂は冷却されており、次の射出時にキャビティ内に流入すると、フローマークや黒点などの成形不良の原因となります。 

スラッグウェルは、スプルーやランナーの末端に設けられたくぼみや溜まり場であり、冷却された樹脂をここに誘導することで、キャビティ内への流入を防ぎます。 これにより、製品の外観品質や機械的特性の向上が期待できます。

スラッグウェルの設計ポイント

スラッグウェルを効果的に機能させるためには、以下の設計ポイントを考慮する必要があります。

位置の選定

スラッグウェルは、スプルーやランナーの末端、またはキャビティへの流入口付近に設けられます。 特に、樹脂の流れが分岐するポイントや、流動抵抗が大きい箇所に配置することで、冷却された樹脂を効果的に捕捉できます。 

形状とサイズ

スラッグウェルの形状は、円筒形や半球形などが一般的です。 サイズは、冷却された樹脂を十分に収容できる容量を確保しつつ、成形サイクルや材料使用量に影響を与えない範囲で設計する必要があります。 

表面仕上げ

スラッグウェル内部の表面仕上げは、樹脂の付着を防ぐために滑らかに加工します。 また、適切なテーパーを設けることで、成形品の取り出しやすさを向上させます。 

スラッグウェル導入のメリット

スラッグウェルを適切に設計・導入することで、以下のようなメリットが得られます。

成形不良の低減

冷却された樹脂が製品に混入するのを防ぐことで、フローマークや黒点、ウェルドラインなどの成形不良を低減できます。 

製品品質の向上

成形不良の低減により、製品の外観品質や機械的特性が向上し、製品の信頼性が高まります。

生産性の向上

成形不良の発生率が低下することで、再加工や廃棄の手間が減少し、生産性の向上につながります。 

スラッグウェルの設計事例

以下に、スラッグウェルの設計事例を紹介します。

事例1：家電製品の外装部品

家電製品の外装部品では、外観品質が重視されます。スラッグウェルを適切に設計・配置することで、フローマークや黒点の発生を防ぎ、高品質な外装部品の製造が可能となりました。 

事例2：自動車部品の機能部品

自動車部品の機能部品では、機械的特性が重要です。スラッグウェルを導入することで、冷却された樹脂の混入を防ぎ、製品の強度や耐久性の向上に寄与しました。 

まとめ

スラッグウェルは、射出成形における成形不良を防ぎ、製品の品質を向上させるための重要な要素です。 適切な設計と配置により、冷却された樹脂の混入を防ぎ、フローマークや黒点などの成形不良を低減できます。 製品の外観品質や機械的特性の向上、生産性の向上にもつながるため、スラッグウェルの導入を検討することをおすすめします。