射出成形品において、「外観は問題ないのに、中がスカスカだった…」というトラブルはありませんか? それは「ボイド」と呼ばれる内部空洞の不良かもしれません。ボイドは一見目立ちませんが、強度の低下や破損、品質クレームにつながる見えないリスクです。
以下に、ボイドの主な発生原因と対策についてまとめます。
ボイドの外観と特徴
ボイドとは、成形品内部に発生する空洞や気泡のことを指します。内部に空気やガスが閉じ込められることで、外からは見えにくい欠陥が生じます。
主な症状、
- 外観は問題なし
- 製品を切断したり破損したときに「穴」や「スカスカ」が見える
- 強度が低下し、後から割れたり欠けたりする
- 超音波検査やX線検査で検出されることもある
ボイドの発生原因を分類して考える
ボイドの発生原因は次のように分類されます。
成形条件の問題
- 保圧不足・冷却不良:充填後に十分な保圧がかからないと、収縮時に内部に空間ができてボイド化。
金型構造の問題
- ガス抜き不足:金型内に空気が逃げずに閉じ込められ、ガスが内包されてしまう。
製品形状の問題
- 肉厚過多・厚みの偏り:肉厚部では冷却が遅れ、収縮差が生じて中心に空洞ができやすくなる。
成形材料の問題
- 樹脂乾燥不良(吸湿性材料):材料に含まれる水分が加熱で蒸発し、ガス化して空洞になる。
具体的な対策と改善手順
ボイドの具体的な対策は次のように分類されます。
成形条件の対策
- 保圧:時間・圧力を適切に調整し、収縮を補う
- 金型温度:冷却を均一にし、急激な収縮を防止
- 射出速度:適度にし、樹脂が均一に広がるよう制御
- 排気:エアベントを見直し、ガス抜き性を改善
金型構造の対策
- コアピンや冷却配管の最適配置:肉厚部分の冷却ムラをなくす
- 真空ベント構造の追加:空気・ガスの逃げ道を作る
製品形状の対策
- 厚肉設計の見直し:厚みを均等にし、収縮バランスを整える
成形材料の対策
- 吸湿性樹脂は成形前にしっかり乾燥(例:PAは80℃で8時間など)
- リグラインド材(再生材)の使用比率に注意
現場で効果があった対策例
ボイドの厄介な点は、外観からは判断しにくいことです。だからこそ、「予測」と「見える化」が鍵になります。
現場では、CAEシミュレーションで内部圧力分布を確認し、“ボイドが起きそうな場所”を事前に把握するのが有効。また、製品設計時点で「この部分、冷却が間に合うか?」という熱設計の視点を取り入れることが、高品質成形の第一歩です。
まとめ
ボイドは目に見えない不良ですが、見逃せないリスクです。だからこそ、設計段階からの予測と、現場での丁寧なモニタリングが重要です。射出成形の高信頼化を目指す上で、ボイド対策は避けては通れないテーマといえるでしょう。
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