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ねじ成形品の金型構造

アイキャッチ画像 金型構造
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射出成形は、熱可塑性樹脂を溶融させて金型に充填・冷却し、製品を成形する工法であり、精度・量産性・コスト面で優れるため、広く利用されています。なかでも「ねじ成形品」は、製品自体にネジ山を持つ特殊な形状であり、組み立て部品や機構部品として重要な役割を担います。

しかし、ねじ形状はアンダーカット形状に該当し、通常の金型開閉方向では成形品の離型が困難です。そのため、専用の構造や機構を持った金型設計が必要となります。

ねじ成形品の特性と課題

ねじ部には以下のような特徴と課題があります。

  • 螺旋構造:連続したらせん形状のため、上下方向への単純な引き抜きでは破損リスクが高い。
  • 精度要求:ネジのピッチや角度は高精度でなければ相手部品と正しく締結できない。
  • 脱型機構の複雑化:アンダーカット処理のために追加の可動機構や制御系が必要。

これらの課題に対応するため、ねじ成形用の金型には特別な構造が求められます。

代表的な金型構造

回転コア方式

回転コアは、ネジ部の形状を持つコアを回転させて製品から抜き取る構造です。

  • 手動方式:成形後に作業者が手でコアを回転。小ロットや試作に向く。
  • 自動方式:ラック&ピニオン、カム、サーボモーターなどで自動回転。量産に最適。

自動回転コアは、成形機の開閉と同期して動作することで、成形サイクル内に脱型工程を組み込み、効率的な量産を可能にします。

分割コア方式

複数のコアブロックを組み合わせてネジ形状を構成し、金型の開閉に応じて横方向に分割・スライドさせて脱型します。主に外ねじ用。

  • メリット:高精度かつ強度の高い成形が可能。
  • デメリット:金型構造が複雑でコスト高。

インサート成形

金属製のねじ部品(インサート)を金型内にセットし、周囲を樹脂で成形する手法です。

  • 高強度なネジ部が得られる。
  • ネジの摩耗に強く、繰り返し使用に適す。

後加工方式

成形後に、タップ加工やネジ切りを行う方式。精度が高く、複雑なネジ形状にも対応できますが、成形工程外の設備が必要です。

成形不良のリスクと対策

ねじ成形品に特有の成形不良もあります。

成形不良リスク対策
ヒケネジ部周辺の肉厚が大きく、冷却が不十分だと凹みが発生。冷却管の最適配置や保圧管理で対策。
バリ金型の合わせ面に隙間があると樹脂が漏れ、ネジ部に不要なバリが発生。金型の精度管理と保守が重要。
変形・破損脱型時にねじ山が破損するリスクがある。離型機構の設計精度を高め、必要に応じて離型剤も併用。

応用事例

以下のような製品でねじ成形金型が活用されています。

  • 医療機器:点滴ポートや注射器キャップなど、清潔かつ高精度が求められる部品。
  • 自動車部品:エンジンカバーや電装部品などにおける樹脂ねじ締結部。
  • 家電部品:外装の組み立て部やメンテナンス部品におけるネジ止め構造。

製品特性に応じて、手動・自動・インサートなどを適切に選定し、コストと精度のバランスを取ることが重要です。

メンテナンスと金型寿命

ねじ成形金型は可動部が多く摩耗しやすいため、定期的なメンテナンスが欠かせません。特に回転部や分割部は、以下のような対策が有効です。

  • 焼入れ処理や窒化処理などによる耐摩耗性の向上
  • 潤滑システムの導入(自動グリース注入など)
  • 定期点検による早期不具合発見

適切なメンテナンスにより、金型の寿命を延ばし、製品精度の維持が可能となります。

まとめ

ねじ成形品は、機能性と組み立て性を両立する上で非常に有用な構造です。一方で、螺旋形状というアンダーカット構造ゆえに、金型設計には高度な技術と工夫が求められます。

回転コアや分割コア、インサート、後加工など、製品形状や生産条件に応じて最適な方式を選定することが、コストと品質の両立に直結します。加えて、成形不良のリスク管理やメンテナンス体制の構築も不可欠です。

射出成形と金型技術の進化により、今後ますます複雑なねじ製品の量産が可能となり、幅広い分野での活用が期待されています。

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