レーザー溶接は、射出成形金型の修正や改造、微細な欠陥補修において非常に有効な技術です。従来のTIG溶接などと比べて、高精度・低歪み・局所加熱という利点があり、金型の補修品質と作業効率を大きく向上させます。
レーザー溶接とは
レーザー光を集光させ、高密度のエネルギーで金属表面を瞬時に溶融・接合する技術です。主にNd:YAGレーザーやファイバーレーザーが用いられます。
主な用途
| 用途 | 内容 |
|---|---|
| 寸法修正・肉盛り | 成形品が寸法外れのさい、キャビティやコア部の肉盛り後再加工 |
| バリ対策 | パーティングラインのすり減り部分を肉盛りして再仕上げ |
| 摩耗部の修理 | スライド、リブ、ゲート周辺などの摩耗部に限定溶接 |
| ピンホール・クラックの補修 | 微細な欠落部分を局所的に埋める |
| 金型の設計変更・製品改造 | ロゴ変更、リブ形状の追加・削除などに対応 |
特徴とメリット
| 特徴 | 説明 |
|---|---|
| 局所加熱で低歪み | 周辺への熱影響が極小、精密部品にも対応可能 |
| 微細加工が可能 | 肉盛り幅0.2~0.5mmなど極細対応、薄肉部でもok |
| 後加工しやすい | 溶接ビートが小さく、仕上げが容易(放電・研削加工) |
| 硬度の維持が可能 | 熱影響部が少なく、焼入鋼や硬化材の溶接にも対応 |
使用ワイヤと溶接条件例
| 材質 | 溶接ワイヤ | 備考 |
|---|---|---|
| NAK80 | NAK80用専用ワイヤ(Φ0.3~0.6mm) | プレハードン鋼、靭性あり |
| SKD61 | SKD61ワイヤ、または類似工具鋼ワイヤ | 耐熱・耐摩耗性部位に使用 |
| STAVAX | STAVAX(SUS420)対応ステンレスワイヤ | 鏡面仕上げや耐食性が必要な部位 |
| HPM1、S50C | 汎用炭素鋼用ワイヤ | 簡易補修や粗肉盛りに適する |
溶接後の仕上げ工程
- グラインダーまたは手仕上げで高さ調整
- 放電加工(型彫りEDM)や研削加工で最終仕上げ
- 必要に応じて焼き戻し処理(歪み取り、硬度調整)
注意点・トラブル防止策
| 注意点 | 対策 |
|---|---|
| 母材との材質不一致による割れ | 適合ワイヤを選定、プレヒート処理も有効 |
| 表面ピンホール・巣穴 | 複数回に分けて薄く肉盛り、再溶接処理 |
| 鏡面仕上げ部の不連続性 | 鏡面研磨前に均一な仕上げを実施 |
| 溶接部の色ムラ・酸化 | アルゴンシールド、酸洗い、バフ処理 |
まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 主な用途 | 補修、改造、寸法調整、摩耗対策 |
| メリット | 高精度、低歪み、焼入鋼対応、再加工性 |
| 適用材質 | NAK80、SKD61、STAVAX、S50Cなど幅広く対応 |
| 推奨 | 微細部、外観品、寸法精精度が必要な金型部位 |
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