射出成形の現場では、いまだに”kgf/cm²”や”MPa”といった圧力の表記が混在して使われていることがあります。これらの単位の違いを正しく理解し、使い分けることで、金型トラブルや条件設定ミスを防ぐことができます。
本記事では、kgfとMPaの違いを中心に射出成形で頻出する圧力単位を分かりやすく解説します。
kgf/cm²とは?
- kgf/cm²(キログラム重毎平方センチメートル)**は、1cm²の面積に1kgfの力がかかっている状態を表す旧単位です。
- “kgf”の”f”は”force(力)”の意味で、地球上の重力加速度(9.80665m/s²)を元にした単位です。
- 1kgf = 9.80665N(ニュートン)
現場でよくある使用例:
- 成形条件:射出圧力 700 kgf/cm²
- 型締力計算:必要圧力 × 製品投影面積(cm²)
MPaとは?
MPa(メガパスカル)はSI単位系の”圧力”の表現。
- 1Pa = 1N/m² → 1MPa = 1,000,000Pa
SI(国際単位系)では、力は”N(ニュートン)”、面積は”m²”で表現されます。
実際の使用例:
- 射出圧力:70MPa
- 型締力:2000kN(=200,000kgf)
換算式と覚え方
1kgf/cm² ≒ 0.0980665 MPa(およそ0.1MPa)
kgf/cm² | MPa換算値 |
---|---|
500 | 約50 |
700 | 約70 |
1000 | 約98 |
覚え方のコツ:
- 「kgf/cm² → MPa」は × 0.098
- 「MPa → kgf/cm²」は ÷ 0.098
どちらを使うべきか?
観点 | kgf/cm² | MPa |
国内現場の慣習 | ◎ | △ |
海外仕様書対応 | △ | ◎ |
設計図との整合性 | △ | ◎ |
学術・CAEとの連携 | × | ◎ |
結論:MPaが今後の主流。kgfは現場用の補助単位として理解すべき。
まとめ:両方使えて一人前
- SI単位(MPa)を正しく使えると、設計・解析・品質保証での意思疎通がスムーズに。
- 現場でkgf/cm²を見かけても、換算して対応できるスキルが必要です。
コメント