ウエルドは金型内に流入された樹脂の合流する部分に溝または模様が現れる現象です。主な発生原因は、製品デザインの影響による場合と、成形条件が不適切な場合(樹脂温度が低い、射出圧力や速度が不十分など)に発生することがあります。
以下に、ウエルド不良の主な発生原因と対策についてまとめます。
ウエルドラインの外観と特徴
ウエルドラインとは、射出成形時に2つ以上の樹脂フロー(流れ)が金型内で合流した箇所にできる線状の跡です。
主に以下のような状況で発生します。
- 製品内に穴(コア)やリブがある場合、樹脂が回り込んで合流
- 複数のゲートから流入するマルチゲート成形
- スライド構造などで流れが分岐・合流する場合
見た目の特徴は次の通りです。
- 薄く筋状に見える(特に光を当てると目立つ)
- 時にヒケや凹みを伴う
- 合流部が完全に溶着されず、剥離や割れにつながることもある
ウエルドラインの発生原因を分類して考える
ウエルドラインの発生原因は次のように分類されます。
成形条件の問題
- 樹脂温度が低い:合流部の溶着温度が不足し、分子レベルで融合しきれない。
- 金型温度が低い:金型が冷えすぎていると、樹脂の流れが早期に冷却され、融合が弱まります。
- 射出速度が遅い:樹脂の合流がスムーズでなく、境目が明確に残りやすくなります。
金型構造の問題
- ゲート位置が不適切:樹脂の流れが交差しやすい設計や、対向するフローが正面衝突する場合に発生しやすいです。
具体的な対策と改善手順
ウエルドラインの具体的な対策は次のように分類されます。
成形条件の対策
- 樹脂温度の上昇:10〜20℃程度上げて溶融性を改善
- 金型温度の上昇:合流箇所周辺を重点的に加温
- 射出速度のアップ:樹脂の合流タイミングを早める
金型構造の対策
- ゲート位置の見直し:合流点が目立たない場所や応力のかからない場所へ
- ベントの追加:合流点にガス逃げがあると融合しやすくなる
- 製品肉厚の最適化:流れやすく溶着しやすい形状設計
現場で効果があった対策例
完全にウエルドラインをゼロにするのは現実的に難しい場合もあります。そこで最近注目されているのが、「目立たない・壊れない・気にならない場所に誘導する設計」です。
例えば、
- 意図的に見えない内面側にウエルドを作る
- リブの裏側など応力のかからない位置に持っていく
- ゲート配置を工夫して“自然な合流”になるよう設計
またCAE(樹脂流動解析)を用いて事前にウエルド位置をシミュレーションする企業も増えています。
まとめ
ウエルドラインは、単なる線ではなく「融合の失敗」です。温度、圧力、速度、形状、空気の逃げ…それら全てが関与しており、樹脂同士がいかに自然に溶け合うかが成功のポイントになります。
成形トライでは、
- 合流点の温度チェック(赤外線温度計など)
- 射出速度と圧力の段階的変更
- ショートショットによる流動状態の確認
といった多角的アプローチが重要です。
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