インロー構造(別名:位置決め嵌合構造)は、射出成形金型において可動側と固定側の金型を正確に位置合わせ(アライメント)するための仕組みです。高精度な製品を安定して成形するためには、金型の位置ズレを防ぐこの構造が不可欠です。
インロー構造の目的と役割
目的 | 説明 |
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パーティング面の位置合わせ | 金型が開閉したときに、キャビティとコアがピッタリ合うようにする |
成形品の寸法精度確保 | 偏心や段差の防止。特に薄肉・高精度成形品では重要 |
フラッシュ(バリ)の防止 | 金型のずれによる樹脂漏れを防止する |
ガイドピンだけでは不十分な精度を補完 | ガイドピンは祖位置決め、インローは精密位置決め |
インロー構造の基本形状
インローは、通常 固定側金型に凸形状(オス)、可動側に凹形状(メス) を設けます。
インロー構造の設計ポイント
項目 | 推奨条件・注意点 |
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クリアランス | 嵌合部は「H7/G6」など高精度な公差で設計 |
深さ(長さ) | 長すぎると離型不良、短すぎると精度不足(通常3~5mm程度) |
抜き勾配 | 嵌合部にもわずかな勾配を付けて離型性を確保 |
材質の硬度差 | 摩耗防止のため、片側を硬度の高い材質にする(例:焼入鋼) |
インロー部の配置 | 複数配置し、金型の平行度・平面度を維持(通常は四隅または対角) |
インロー構造の種類
種類 | 特徴 |
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丸ピンインロー | 円筒ピンと穴で構成、加工しやすく一般的 |
角インロー | 四角形上で回り止め効果あり |
段付きインロー | 段差を設けてガイドピンとの干渉を避ける |
インロー構造とガイドピンの違い
項目 | インロー構造 | ガイドピン |
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役割 | 精密位置決め | 開閉時の案内・祖位置決め |
精度 | 高(μm単位) | 中(0.01~0.05mm程度) |
対象部位 | パーティング面の嵌合 | モールドベース同士のガイド |
注意点・トラブル事例
- 摩耗やガタつきによる位置ズレ→ 嵌合部のクリアランスが広がると、製品にバリや寸法ズレが発生
- 勘合不良による金型破損→ 偏心した状態で閉じると、インロー部が干渉して破損の原因に
- 離型不良→ インローの勾配不足や過剰な干渉により、金型が開かなくなるケースも
まとめ
ポイント | 内容 |
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目的 | 精密な位置決め、バリ防止、寸法安定化 |
構造 | 凸凹の嵌合でパーティング面を揃える |
設計注意 | 公差管理、材質選定、配置バランス |
他部品との連携 | ガイドピンやエジェクターピンとの干渉も考慮 |
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